Left After the Credit: 思惟のフィルムノート

アート系・インディペンデント系の海外映画を中心に、新旧問わず感想や考察を綴っています。

アドレセンス / ブルータリスト / シック・オブ・マイセルフなどの感想書き散らし

2025/3/24~2025/3/30

ミナリ


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※以下ネタバレ含みます。

家族って本当に難しい。家族の夢と父の夢が重なるとは限らないし夫婦も親子も結局は他人だ。作物を育てることと同様に、思い通りにはならない。祖母が体を悪くしてしまったのは水道が止まった時に水を飲むのを我慢していたことも原因だっただろうか。父が作物を火事で失ったことで、セリを、家族を、前を向けるようになり良かった。

 

シック・オブ・マイセルフ


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Amazon Primeでも配信が始まった「ドリーム・シナリオ」がチャーリー・カウフマン風味でかなり好きだったので同じ監督(クリストファー・ボルグリ)の過去作も見てみた。こちらも他人からの名声を求めることがいかに無意味かを皮肉交じりに、しかし痛烈に描いている。何者にもなれず、恋人とも対等な関係ではなくなっていく中でコンプレックスを増大させた主人公が他人からの注目を浴びるために症状が見える皮膚病になるべくそういった副作用が出る薬を飲むという話。一見ホラーのようなテイストだしそのようなマーケティングがされているが個人的には主人公の行動やその動機は他人事とは思えなかった。前半は妄想と現実がはっきりわかるような造りになっているが、それがグラデーションのようにラストはどこからどこまでが妄想/現実なのかわからないようになっていく構成も見事だった。ミュンヒハウゼン症候群のような明らかな精神病にも関わらず、主人公が友達にその症状を打ち明けたらはっきりとおかしいと言われ共感や心配もなく拒絶されてしまう妄想までしてしまうところが切なかった…。私も人前で歌を披露する妄想することあるよ…。

 

アドレセンス


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英国製のNetflixオリジナルドラマ。前情報はほとんど入れずに見たのだが、10分ほど過ぎたころに「これはもしやずっとワンカットなのか?」と気づき鳥肌が立った。奇をてらう形でのワンカットではなく、物語の"リアルタイム"感や緊迫感を際立たせる演出の一つとしてのワンカットが見事で、「どうやって撮ったのか…」と裏方の技術力の高さがそこかしこに垣間見える。そしてなんといっても少年が起こした同級生の少女の殺人事件の裏に確かに存在する現代の普遍的な男尊女卑、ミソジニー思想、父子間のマッチョイムズの継承とコンプレックスを視座高く暴く構成が素晴らしかった…。もう人間はこんな段階にまで来てしまったのです。私がジェイミーだったかもしれないし、私にもし子供ができたら、その子がジェイミーにならないなんて言い切る自信は到底無い。親という立場での子供に対するアンコンシャスバイアスはどれだけ矯正しようとしても難しいものがあると思うし、親の手が届かない場所での世界観・常識(学校やインターネット)は世代間でのギャップがさらに広がっている。もう人類は滅びたほうがいい、反出生主義強化…。

 

ブルータリスト


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ブラディ・コーベット監督作。アカデミー撮影賞を受賞しているように、とにかく撮影が素晴らしい。フィルムでの「決まってるね!かっこいい!」と思うカットが大量にあり、前半は特に映像を見ているだけでも楽しかった。印象的だったのは主人公が45度の角度をつけて全面に本棚を設置させた図書室を完成させてスポットライトのように当たった日の光のもとにパイプ椅子を置くシーン。音楽も相まって今作の中で一番心が高ぶった。後半は物語としては想像していたものとかなり異なっており困惑、フィクションかつ一応ホロコーストを背景として持つ作品がこんなにカタルシスを無視した造りにすることがあるんだ?とエンドクレジットでは軽く頭を抱えたしたが、画作りがとにかく強いので3時間超えの上映時間自体は全く苦ではなかった。町山さんの1時間半の解説がYouTubeに載っておりますので、諸々はそちら参照のこと。そしてエイドリアン・ブロディは相変わらず色っぽい…。


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