Left After the Credit: 思惟のフィルムノート

アート系・インディペンデント系の海外映画を中心に、新旧問わず感想や考察を綴っています。

ミッキー17 / トラップ / スピーク・ノー・イーブル / ブラック・ミラー シーズン7などの感想書き散らし

2025/4/7~2025/4/13

トラップ


www.youtube.com


ここ最近のシャマラン映画の中ではトップクラスに面白いと思う。伏線的なディテールも丁寧で、ジョシュ・ハートネットの演技も素晴らしい。サイコパスでありながら父親でもあるという両面が抱えるハラハラに、観客が共感できるような脚本の作りもとても良い。(なぜ私たちはシャマランの話をするとき、こんなにも偉そうになってしまうのか?)
先日『ポップスター』でナタリー・ポートマンのあり得ないほどダサいコンサートシーンを見た直後だったので、シャマランの娘・サレカが今どきのティーンに確かに人気が出そうな華を持っているのもその見せ方もすごくよかった。あの規模のコンサートシーンの撮影は本当に大変だっただろうなと思う。
クーパーは生まれながらのサイコパスなのか、それとも母親の教育が原因なのか…。呪いのような自分自身と向き合う主人公の姿には、サイコパスものの中でもトップクラスの説得力があった。
シャマランは超常現象ではなく、心理描写にだけ向き合うと、こんなに面白いエンタメ作品を作れるんだなと実感した。もっとこういう作品を観たい。面白かったので母親に勧めたら、2回観たと言っていた(笑)

 

スピーク・ノー・イーブル  異常な家族


www.youtube.com

冒頭1分ほどでマカヴォイがビーチベッドを引きずって行くシーンで爆笑。クライマックスの狂ったマカヴォイ、漂白剤が顔にかかって目が真っ赤になるも、水で流すだけで元通りになるマカヴォイ、本当に面白い。
リメイクとしての改変も違和感なく、意味のあるものばかりで、この物語が孕むジェンダー間の問題意識がより強調されていたと思う。
…が、北欧ホラー好きとしては、やはりメタファー多めのオリジナルの方が好み。こちらはマカヴォイが面白すぎて、全く怖くなかった。

 

RUN/ラン


www.youtube.com

『トラップ』の宇多丸さん評を聞いていたら話題に上がっていて、「あ、まだ観てなかったな」と思いすぐ鑑賞。これもめちゃくちゃ面白かった。ラストは好みが分かれそうだけど、個人的にはすごく好き。
障がいがあって、トラウマもある人間が、それを“自力で”乗り越えて今は健やかに暮らしている、みたいな綺麗事にはあまり興味がないので。

 

ミッキー17


www.youtube.com


これは……え……?ポン・ジュノ×ロバート・パティンソンなんて勝ち確だと思うじゃないですか?でも、SFとしての目新しさは何もなく、展開も単調。登場人物はどいつもこいつも不快で、観ていて2時間強ずっと苦痛だった。(スティーブン・ユァンだけは今回も好きだった。どんな役でもいつでも好き。)
マーク・ラファロとトニ・コレットのキャラに至っては、現実のトランプを見ているほうがよっぽど面白い。あのマーク・ラファロのキャラが、暗殺未遂のあとに「Fight!」なんて言えると思う?無理だろうよ。
ロバート・パティンソンも今回は色気ゼロの役作りで、もう本当に……辛い。映画制作が大変なことは理解しているつもりなので、あまり酷評したくはないのだけれど、なんでこんなことになるのか…?才能もバジェットもあるのに…?観た当日は怒りで震えていた(才能の無駄遣い的な意味で)が、数日経ってみると、「あれは何だったのか?」という朧げな記憶になってきた。私の出来の悪い夢だったのかもしれない。

 

ブラック・ミラー シーズン7


Thank you, God, it's a new series of Black Mirror!!
大好きで大好きなブラック・ミラーのシーズン7の配信が始まりましたよ。
観たエピソードから感想書きます。


www.youtube.com

普通の人々

ラシダ・ジョーンズ主演、しょっぱなから超絶バッドエンド。さすがとしか言いようがない。
サブスク文化への強烈な警鐘。サブスクに依存するということは、価格改定やサービス改悪によって、自分の生活スタイルそのものを変えざるを得なくなるということ。そしてそれが、医療のような人間の根幹に関わる領域にまで及んできたら?
「普通の人」になるには、想像以上にお金がかかる時代になっている……。
同時に、生配信での投げ銭文化の危うさも描かれており、ブラック・ミラーらしい骨太な話だった。このテーマで長編映画が観たい。シーズン7で一番のお気に入りになりそう。

 

ベット・ノワール

ヒッチコックっぽさのあるスリラーで面白かった。ただ、そのギミックはまさにチャーリー・ブルッカー的な近未来技術ネタ。
ラストがやや軽く感じられたのと、「いじめの復讐の復讐」で終わってしまう構造が、倫理的にちょっとどうなんだろう…という引っかかりがあった。
途中までは本当に良かっただけに、違う結末を観たかった気もする。まあ、ブラック・ミラーで因果応報、勧善懲悪的なエンドは禁止されてるんでしたっけ?

 

↓よろしければクリックお願いいたします!