Left After the Credit: 思惟のフィルムノート

アート系・インディペンデント系の海外映画を中心に、新旧問わず感想や考察を綴っています。

iHostage / オーダー / リベンジ / SISU などの感想書き散らし

2025/4/27~2025/5/4

iHostage


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実際にアムステルダムのApple Storeで起こった人質事件をベースにした作品。人質側と警察側(現場の警官と交渉人)など、複数の視点から描かれていて、緊張感はずっと持続していたので飽きることはなかった。
ただ、群像劇スタイルゆえに誰に感情移入すればいいのか少し迷子になり、事件もあっけなく幕を閉じ、犯人の動機も明かされないまま終わるので(それが事実だから仕方ないのだが)やや不完全燃焼感が残った。
少し脚色してもいいから、犯人側の視点をもっと描いてほしかったな。再現VTRを観たいわけではないので。
最初「iHostageって変わったタイトルだな〜」と思って観てたけど、途中で「あっApple製品と掛けてるんだ!」と気づいた瞬間が、正直いちばんテンション上がった。

 

ハボック


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トム・ハーディ主演のアクション映画。戦闘シーンの撮り方が手持ち風だったり謎にワンカット風だったりごちゃごちゃガチャガチャしていて画面酔いするし、それだけでかなり集中力が削がれた。
ストーリーも、麻薬を巡るマフィアと警察のいざこざ…とありがちで、全然ノれなかった。
ただやっぱりトムハは声が最高なんだよなあ。

 

オーダー


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ジュード・ロウとニコラス・ホルト主演の実話ベースの映画。ニコラス・ホルト演じる白人至上主義者ボブ・マシューズと、そのカルト集団を追い詰めるジュード・ロウ演じるFBI捜査官の対決が描かれている。
ボブ・マシューズが活動の指針にしていた『ターナー日記(The Turner Diaries)』(著:ウィリアム・ルーサー・ピアース、偽名:アンドリュー・マクドナルド)が登場する。この本は白人至上主義や極右思想を描いたフィクションで、調べてみたところ現在のアメリカの極右や陰謀論者の中にもこれを信奉している人がいるらしい。アメリカでは禁書扱いのような感じで書店などでは買えないけど、ネット上ではPDFが出回ってるとか…。
映画は無骨なつくりながら、現代アメリカにも通じる問題をしっかり描いていてなかなかの良作。ただし、ジュード・ロウのキャラが事件を“外側から描くための存在”に留まってしまっている分、ラストはややスッキリしない印象が残った。

 

リベンジ


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※以下、軽いネタバレを含みます。
『サブスタンス』の日本公開も近い、コラリー・ファルジャ監督作。想像以上にバイオレンス描写が容赦なくて、めちゃくちゃ面白かった!!
ただ復讐劇としては、主人公がもっと敵を徹底的に追い詰めるような展開になっていてもよかったかも。
最後も銃で撃ってあっさり殺してしまうのは少しもったいなく感じた。もっと「言葉で謝らせた上で殺す」とか、「生きたまま象徴的に去勢する」みたいな、強烈な“復讐の芸術性”が欲しかったなあ。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』のように、相手に“悔い改め”の時間を与えた上での制裁…というような、女が暴力をコントロールする構図をもっと観たかったのかもしれない。とはいえ、女の怒りと血と砂漠があそこまで泥臭く描かれているのは快感で、やっぱりコラリー監督には期待大。

 

SISU


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「彼は不死身なんかじゃない。死なないと決めてるから死なないんだ」
このセリフ、映画史に残る名台詞では!?
ナチを圧倒的な暴力で叩き潰すじいちゃんの姿に、カルト的な崇高さすら感じた。
SISU(=諦めない精神)という言葉に全てが詰まってけど、彼が無言で地雷原を歩いたり、空を飛んだり、水に潜ったりするたびに「こいつがもう神話じゃん…」と思った。
中盤で女性捕虜たちに銃を託して「お前らでナチをぶっ殺せ」っていう展開も、この映画の価値観が“男一人の英雄譚”にとどまらないことを証明していて最高だった。
とにかく、しぶとくて、泥くさいのにそんな不屈の精神は美しい。声を大にしておすすめしたい。

 

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