Left After the Credit: 思惟のフィルムノート

アート系・インディペンデント系の海外映画を中心に、新旧問わず感想や考察を綴っています。

オールド・ジョイ / アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方 / ロイ・コーンの真実 / ライトハウスなどの感想書き散らし

2025/5/12~2025/5/18

僕らの世界が交わるまで


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ジェシー・アイゼンバーグ監督・脚本第1作。こちらも評価が高いみたいだけど、個人的には苦手だった…。ジギーの好きな女の子へのアプローチの仕方が痛くて(お話としてわざとなのはわかるんだけど)結構見ていられないというか、私的な何かにダイレクトに効いてしまったのか、何回も再生停止しながら何とか見終わったって感じでした。それにジュリアン・ムーア演じるお母さんのあの無自覚なグルーミング的行動がもう本当に嫌で…。最後に親子が急に和解した風なのも納得いかなかった。いくら自分の息子が自分の思い通りに育っていないからと言って疑似息子として他人の同世代の子供の将来とかに口出しするってあり得なくないですか…。それに、ジギーも生意気で勉強はできないかもしれないけど、インターネットで2万人のフォロワーがいてオリジナルソングを発表してるって、それって十分褒められたことじゃないんですか?それを終始どの登場人物も馬鹿にするような目線だったのが気に食わなかったです。今の親世代でもそういうネット配信者への軽蔑ってあるものなのだろうか…。お母さんの逸した行動がお父さんにバレて離婚、くらいの勢いがあったらもっとよかったんだけど。それだとちょっとノア・バームバックっぽくなりすぎるか?私が勝手にティーンムービーだと期待してしまった故のがっかりもあったと思います。ごめん。
ジェシー・アイゼンバーグの第2作目、「リアル・ペイン」は大切な映画になり、別途記事を書きましたのでそちらもぜひ読んでいただきたいです。

 

sheeishee.hatenablog.com

 

オールド・ジョイ


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「リアル・ペイン」に似ているという評を読んで鑑賞。昔は仲の良かった2人が、大人になってそれぞれが抱える責任や立場が変わってしまったがために、もうあの頃と同じような友情は育めないのだと小旅行を通して実感してしまうお話。自由に生きている側のカートだけがそのことに気づいてしまうような温泉でのエピソードトークのシーンがとても切ない。でもこういうことは往々にしてありますよね。そもそも友達ってある同じ環境に偶然居たから仲良くなっただけで、その環境という枠がなくなってしまってからも友達で居続けるのって本当に難しいし、労力がものすごくないですか…?——こんな考え方のため、私は社会人になってからというもの、すでにかなりの数の友人を無くしました。悲しみは使い古した喜び(Old joy)ですよね…。

 

アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方


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もっとトランプ批判全振りな内容になっているかと思ったら、特に前半は彼の青年期の人間的な部分や葛藤も描いており、想像よりフェアな作品で驚いた。しかも一つの映画としても本当に70年代の映像を見ているかのような映像表現やトランプを演じたセバスチャン・スタンとロイ・コーンを演じたジェレミー・ストロングの演技がとてつもなくて、全体として完成度が高い。映画のラストに自身の自伝を書かせようとしたライターに「あなたの人生、本にできませんよ」とトランプに突きつけるのがこの映画を作ることへの皮肉になっているのが上手いな、と。まさに今リアルタイムで観るべき映画だと思います。①攻撃攻撃攻撃!②非を認めない!③劣勢でも負けを認めない!本当にこれをやり続けてまたトランプは大統領になってしまったのですから、こんなバカみたいな戦法がある一定の効果はあると言えてしまうのが怖いですよね…。

 

ロイ・コーンの真実


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アプレンティスを観た方なら皆様思うことだと思いますが、トランプよりロイ・コーンのほうがよっぽど映画的な、語り甲斐のある人物じゃないか?と思い、彼のドキュメンタリーも鑑賞した。彼がやった数々の極悪非道な行動や倫理観の無さには全く許容できないものの、自身のユダヤ人で同性愛者であったという重要なルーツを生涯隠して否定し続けたというコンプレックス丸出しの生き方は、心底惨めだと思うと同時に、彼もある意味時代の被害者だった要素はあったのかもしれないと少し同情してしまいました。ドキュメンタリーはロイ・コーンのような人間が大統領になってしまったら世界はどうなってしまうのか?という問いかけで締めくくられ、アプレンティスよりトランプ批判的な語り口になっていました。

 

ライトハウス


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これ実は以前観るの途中で挫折したんですよ。今回はちゃんと鑑賞しました。
 閉じられた灯台の中で、2人の男が少しずつ壊れていく密室劇。 殺されるカモメ、主従関係が逆転する上司と部下、触れてはならない“光”と与えられた“罰”。(この“罰”の描写は先日鑑賞した『憐れみの三章』の第2話目でエマ・ストーンに与えられる罰と同じギリシャ神話をモチーフにしていた。)
神話、性、罪、孤独―― 「正気と狂気のあいだ」で揺れる男の脳内神話。 モノクロフィルムの撮影や画面のアスペクト比で1930年代の映画を忠実に再現しており、ロバート・エガースは時代の再現性へのこだわりがずば抜けているなと。『ノスフェラトゥ』も楽しみ!(明日観に行きます)

同じくロバート・エガース監督の『ウィッチ』はかなり気に入り、感想記事を書いておりますのでこちらもぜひ。

sheeishee.hatenablog.com

 

 

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