6月も終わるということで、今日までに鑑賞した新作映画約40本の中からベスト5を決めようと思う。(ベスト10でないのは10本も選べなかったからです。)もちろん、上半期公開で未鑑賞の作品も多く、これから配信や再上映で観る作品が年間ベストにランクインする可能性もあるし、今回選んだ作品が時間の経過とともに印象が変わってランキングから外れることもあるかもしれない。
また、ベストに挙げたからと言って「完璧な映画!全人類観るべき!」というスタンスでもないことはご留意ください。あくまで私が気に入った偏愛映画5本です。
※順不同
I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ
公開は昨年末だが、私の映画初めがこの作品だったため入れさせてください。
「己がアート系の映画を理解できるからって、己も高尚だと勘違いすんなよ!」と真正面から殴られ、「ごめん…」となった作品。2000年代のティーンムービーが好きな私にとって、学校やレンタルビデオ店などの雰囲気にもワクワクした。
また、レンタルビデオ店の店長に主人公が一方的に恋心を抱くも、彼女がはっきり「NO」と告げる展開や、彼女が映画業界で受けたセクハラの過去を映画業界を夢見る彼に語るなど、ポスト#MeToo時代の視点もあり、今の時代に映画好きを名乗るうえで意識しなければいけないことを提示する姿勢を感じられ、安心して観られた。
そして、受け身で友達の少ない私はいつも思い出してしまう。「人に好かれたいなら、その人が好きなことについて質問すること」だと。すぐ映画の話ばっかしてごめんって…。
※ブログ記事無し。
教皇選挙
映像や色彩に目を奪われたのはもちろん、この時代のローマ・カトリック教会という男性中心のシステムに風穴を開ける物語にも胸を打たれた。新作映画を観るとき、私はつい「なぜいまこの作品を作る必要があったのか?」と考えてしまうが、この作品はまさに“いま”語られるべきものだった。コンクラーベが行われた年に日本公開されたというリアルタイム感もあり、周囲の人と本作について話す機会も多く、この映画について考えている時間が長かった。ちなみに、本物の枢機卿が本作を観て「コンクラーベのシステムの再現度は高いが、あんなふうに候補者を攻撃したりしない」などと言っているのを目にしたが、それよりもあのラストをどう思ったか聞きたい。……亀のことじゃないよ。
※ブログ記事無し。
リアル・ペイン~心の旅~
街が抱える暗い歴史と、心の痛みの“見えなさ”をリンクさせた脚本が巧みだ。海外旅行という題材はありがちではあるけれど、団体のツアーを通じて、土地の見たい部分だけを都合よく消費することへのフラストレーションを描いた本作は稀有だと思う。いかにも植民地主義的な思想で現地文化に“取り込まれる”という話で終わらせる物語が多いからだ。どんな過去や心の痛みを抱えていたとて、私たちはこの社会で生きていくしかない。海外旅行をしたとて、「自分」は見つからない。それを悲劇と思うか、それとも喜劇と思うかはいつだって自分次第だ。ジェシー・アイゼンバーグには、このままインディーズで小さな作品を作り続けてほしいと強く思う。
デビルズ・バス
個人的な今期の掘り出し物。18世紀のオーストリアやドイツでこのような出来事があったことを知らなかったし、400件ほどの少ない記録からでも映画にしようとした監督の姿勢に心を動かされた。歴史ものでありながら、うつ病や女性が抱える抑圧を丹念に描いており、現代に語る意義を感じられた。「長い」というレビューをいくつか見かけたが、少なくとも私はどの描写も無駄だとは思わなかった。細かな描写ひとつひとつが彼女の感じる抑圧や性格的な特徴、変化を描くために必要なものだったと感じている。
カーテンコールの灯
「(フィクションとはいえ)死を美化するな!」というセリフだけで救われた。今に始まったことじゃないが、最近は悲劇や死を美化しすぎな新作の応酬に参っていたのでなおさら…。タブー視されがちな問題をドラマチックにしすぎずに語り、安易な救いを与えず、しかしそれでも誰もが実践可能な小さな道筋と人とのつながりを示し、そして生活に溢れ出してしまうユーモアを照らしてくれるケリー・オサリヴァンは私の中で信頼のおける映画作家のひとりとなりました。
個人的な反省とこれから
昔よりも映画を選り好みするようになってしまった。世界中の映画を観たいと思っているものの、観ているのはヨーロッパや北米作品が中心で、アジア・中東・南米などの作品はまだまだ鑑賞本数が少ない。今年は邦画もまだ1本しか観ていない。今回ベストに挙げた作品もヨーロッパと北米作品だけになってしまい、これは大いに反省している。
また、女性の生き方やLGBTQ+、精神疾患など、関心を持っているテーマの作品には過剰に熱くなる一方で、まだ自分の理解が及んでいないテーマや背景が描かれている作品については、十分に受け止められていない、見えていないことがあると日々感じる。(最近だったら『罪人たち』がそう。)下半期は映画の外側でも、もっとこの世界や他人について学ぶ時間も持ちたいと思う。その好奇心が、私が映画を観続ける理由のひとつでもあるからだ。
そして、いつも拙ブログを読んでくださっている皆さま、はてなスターを付けてくださる皆さま、本当にありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。
これからも、皆さまの映画鑑賞後の余韻やもやもやのお供にしていただけたら幸いです。今月はちょっと更新を頑張りすぎていたので、以降はもう少しのんびりやりたいと思います。あと、酷評を書くのは私の精神衛生にもよろしくないので控えたい。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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